医家向け 超音波による骨盤計測方法1
骨盤計測はX線撮影やMRIで行うのが本筋です。しかし超音波検査でも出来ない事はありません。下図(図-1)のようにコンベックスプローベ(GEかメディソンを使用)による経腹超音波骨盤縦断断層によって、グースマン(Guthmann) X線撮影法に近似する情報を得ることができます。経膣プローベによる骨盤計測方法も試みていますが、今のところ困難です。
この方法の最大の欠点は、骨盤の横断断層による情報が皆無である点です。つまりマルチウスX線撮影のような骨盤計測を行うことはできないのです。過去に、コンパウンドスキャンを用いて、骨盤の横断断層による解析を試みた前九州大学産婦人科教授・中野先生の伝説的論文がありますが、コンベックスプローブでの骨盤の横断断層は不可能でした。あくまでも骨盤入口部の縦断断層だけのアバウトな情報を得ることしかできませんが、それでも決して無駄な情報では無いと考えております。難産を回避する為の、方策として、日々の診療に役立てていただければ幸いです。
もう一つ申し添えておきたい事は、この方法は、分娩中の難産診断・CPD診断についてはほぼ無力であるということです。従来通り、X線撮影による骨盤計測を行っていただきたい。

図-1
上図(図-1)に示しますように、骨盤の入口部の縦断像をコンベックススキャンで表示できます。音響学的陰影が図のように生じますが、児頭の下方にはむしろ陰影が生じない所があり、仙骨辺縁像を読影できることに注目してください。児頭の頭頂部や底部は音響学的陰影を生じさせますが、児頭の大半の部分は超音波の透過性が良く、音響学的にはいわゆる「窓」の役目をしています。
いわば骨盤というトンネルの入り口から深さ4~5cmくらいまでの広さを知ることができるのです。OC(産科的真結合線)や骨盤開角などを超音波断層検査で知ることができるのです。
超音波検査の便利な点は何と言っても、くりかえし検査できるということです。妊娠8ヶ月くらいから、 妊婦健診のたびにくりかえし検査することで、どうしても生じる検査上の誤解・誤差を修正していくことができます。
胎児先進部の骨盤内への下降度も知ることができますので、難産予防のほかに早産の管理にも応用できます。 今回、私が行っている超音波診断方法の実際の一部を公開いたします。
超音波による産科的真結合線UOC
(ultrasonic obstetric conjugate)の計測方法
UOCは1998年鹿児島大学産婦人科が提唱したものです。→文献1)
産科的真結合線(OC obstetric conjugate)は本来、X線骨盤撮影により計測されるべきものであります。
理由は後述しますが、超音波によりOC(産科的真結合線)をX線撮影のように正確に計測することはやはり不可能のようです。しかし、断層方法を少し工夫することによって、Guthman(グースマン)X線撮影に非常に似た超音波画像を描出することができ、X線撮影により計測された OCに近似した計測値を得ることができます。「中らずといえども、遠からず。」というわけです。UOCはOCではないが、OCに近いものです。
1.恥骨・恥骨結合部の超音波断層像について

図-2
恥骨付近の描写性を理解するために、左図(図-2)のように恥骨結合上で横断断層をまず行ってみてください。
その際、恥毛が読影の妨げとなりますので、プローベに充分なゼリーを塗る必要があります。
恥骨結合部は下方に長く伸びる象の鼻のようなエコー像として描出されます。
恥骨結合部は骨組織ではないので超音波減衰が少なく深部まで描出されます。両側の恥骨部分はその上縁のみが鳥の翼のような高輝度線像として描出されます。
余談ですが、この恥骨結合部横断像を知っておくと、産後の恥骨結合離開の診断に応用できます。下図(図-3,4)は恥骨結合離開した症例の恥骨結合部超音波横断像です。

図-3

図-4

図―5A 図―5B
次に恥骨結合上で縦断断層を行いますと、恥骨結合部は図―5Aのように中輝度の楕円形充実性像(恥骨結合像)として描出されることがありますが、この像が妊娠中、全例で明瞭に観察できるわけではないようです。
しかも、この恥骨結合像の内側は超音波入射方向の遠位側(裏側)になるために境界があいまいであり、UOCの恥骨側計測起点とするには不適切であると思われます。
恥骨結合に近接する恥骨上で縦断断層を行うと、図-5Bのように恥骨上縁像(高輝度像)が描出され、その下方に音響学的陰影が生じます。 この恥骨上縁像は全例で明瞭に描出されます。この像の内側端をUOCの恥骨側計測起点としています。
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