当院の無痛分娩看護マニュアル
1.同意書の確認
当院の硬膜外麻酔説明書を読んでもらい、麻酔手順・分娩誘導手順・メトロイリンテル・陣痛促進剤の使用・人工破膜・偶発合併症などについて説明し、同意書にサインをしてもらう。麻酔禁忌事項が無いか再度チェックする。2.救急器具の確認
アンビューバッグ(Ambu-bag)準備、昇圧剤(エフェドリン)・副腎皮質ホルモン(水溶性ハイドロコートン)などの救急薬品の確認。気管内挿管用具の確認。


3.血管確保
病室で血管確保し、しばらくして分娩室に移動する。心電図・パルスオキシメータ・血圧連続 監視装置・胎児モニターを装着する。
ポタコールR500ml+硫酸アトロピン1A+アタラックスP 1Aで開始。
ボルベン500mlを三方活栓より同時点滴使用することもある。
アクチット 500ml (VC500・ネオラミン3B・プリンペラン入り)
ポタコールR 500ml(VC500・アリナミンF入り)、ソルデム3A 500mlなどを追加補液する。
4.硬膜外麻酔準備


体位は左側臥位。背中を丸める姿勢を指導する。Nsは清潔な服装・マスク着用、清潔キャップで頭髪をおおう。当院の硬膜外麻酔器具セットの確認・準備。清潔区域を設け、その上に麻酔用滅菌パックセット(常に2セット準備しておく。)を載せる。麻酔開始するまでに、必要物品をトレイ内に清潔に配慮しながら配置しておき、生理食塩水を入れた容器に薬液・消毒液が混入しないように注意し、穿刺するまでは清潔カバーをかけておく。消毒前に背骨の超音波検査を行うので、装置をスタンバイしておく。当院の無痛分娩における穿刺部位は第1第2腰椎間が第一目標で、穿刺困難な場合は第2第3腰椎間としている。のちに緊急帝王切開となった場合、第3〜第5腰椎間を腰椎麻酔穿刺のために空けておくためと、経験的に第1第2腰椎間穿刺の麻酔効果が高いため。
ずれた場合や血液が逆流する場合は方向を変えていれなおす。介助者は妊婦に優しく声掛けして落ち着かせ、ゆっくりと呼吸するように指導する。


5.テストドーズ(試験投与)
(チューブのくも膜下誤迷入をチェックするためである。)チューブを正中に挿入できたら、深さ3〜3.5cmとなるように調整する。術者は髄液・血液逆流の無いことをたしかめチューブからテストドーズ(0.25%マーカイン)を2ml注入する。血圧を連続測定する。急激な血圧低下・下肢の麻痺が起きないかチェックする。
麻酔液が血管内に誤って注入されると、産婦が耳鳴りや口周囲のしびれ、味覚の異変を訴える。そうした場合はただちにチューブを抜かなければならない。
6.穿刺部位・カテーテルの保護・固定
テストドーズ(試験投与)後、異常なければ穿刺部位のカテーテルが折れないようにガーゼで保護・固定し、被覆材(オプサイト)でおおい、カテーテルを清潔にテープでしっかりと固定する。
7.麻酔液初期投与
テストドーズ2ml注入後5分後に、体位を右側臥位に変える手助けをする。右側臥位で2ml(0.25%マーカイン)注入する。血圧は連続測定する。その5分後にセミファーラー体位に変え、0.25%マーカインを4ml注入する。当院での初期投与はテストドーズもいれて、0.25%マーカイン8mlである。この時、延長チューブ・フィルター・カテーテル内には2mlの未投与液が残っていることになる。(これは30分後の麻酔維持液自動注入開始後にゆっくりと注入されることになる。)胎児心拍数モニターを装着する。
8.血圧低下時の対応
セミファーラー位となると。血圧下降が起こりやすくなる。血圧下降したら、エフェドリン1A(40mg)を20%糖液19mlで希釈し、3ml(6mg)ずつ静注する。ボルベン500mlを輸液追加する。酸素投与を行う。落ち着くまで、血圧を連続監視する。上肢・下肢に麻痺がないか、呼吸状態に異常がないか観察する。エフェドリンは胎盤を通過し、胎児への影響(臍帯動脈血pH低下)をまねくことがある。酸素をマスク5リットル/分ながす。SHS(仰臥位低血圧症候群)ならば、側臥位とする。
9.メトロイリンテルの挿入
ネオメトロかCookバルーンを医師が挿入する。医師は前後に超音波検査を行い、臍帯の位置を確認する。メトロ使用後は臍帯下垂・臍帯脱出を警戒する。
10.麻酔の維持
麻酔液カクテル(61ml)をクーデックシリンジェクターに注入する。接続部が脆弱なので接合部を破損しないように。フローセレクターにより4,8,12ml/hrの調整ができる。初期投与終了後30〜40分経過後から指示された注入速度で注入をスタートさせる。その後は適宜、血圧測定、心電図モニター観察、体温のチェックをおこなう。適宜、導尿する。
11.陣痛促進剤の使用
アトニン点滴を指示通りに行う。胎児心拍数モニター装着する。
異常胎児心拍数波形の読み取りに習熟しておく。異常があれば、医師に報告する。
異常あれば、陣痛促進剤の中止・減量や側臥位への変換、酸素マスク5リットル/投与を助産師の判断で適宜おこなってよい。内診や導尿の必要性を説明し、適宜行う。
12.抗生剤の使用
指示を確認する。投与後6時間経過したら、再投与の指示をあおぐ。
13.人工破膜
メトロ脱出前に同意を得ておく。脱出したら医師に報告する。臍帯の位置を超音波検査で確認後、再度説明し同意を得て、医師が人工破膜する。メトロ挿入中や人工破膜前後では、胎児モニターを注意深く監視し、臍帯下垂に留意する。高度の変動性胎児徐脈などの異常があれば、直ちに医師に報告する。
14.当院では子宮口全開大後は麻酔液注入をとめる方針
なるべく自力で赤ちゃんを産んでもらい、産んだ後の感動を味わってもらえるように配慮する。全開大後は陣痛にあわせ、いきんでもらう。無痛分娩の際は、分娩第二期が延長しやすい。根気よくあたたかくはげましの言葉かけをおこなう。1時間以上、経過した場合は医師に報告する。状況により、吸引分娩となるが、なるべく自力で分娩可能となるように援助する。ゼリーや水分補給・補液速度・体位の選択・酸素投与方法については助産師の判断で適宜おこなう。
軟産道強靭があれば、医師に報告する。医師が児頭の排臨・発露まで助産師の代りに介助することもある。当院では会陰切開はなるべく正中切開をおこなう方針。状況により、会陰切開をしない場合もあるので会陰保護・肛門保護をしっかりとおこなう。
常に胎児モニターを監視し、胎児状態・陣痛強度の把握につとめる。
15.分娩後の看護
無痛分娩では、産後出血が多い傾向にある。止血のための看護をおこなう。
産後はルーチンとして点滴中にアトニン5単位をいれて早めに点滴する。
16.緊急帝王切開
緊急帝王切開に備え、手術室内の準備をすませておく。緊急帝王切開時の看護体制を常に検討しておく。
(硬膜外麻酔の合併症)の看護マニュアル
1.低血圧
原因としては、麻酔後の末梢血管拡張による循環血液量の減少、SHS(仰臥位低血圧症候群)、まれであるが全脊麻(ぜんせきま)などである。
予防策は麻酔前に500ml以上の充分な補液をしておき、補液中に硫酸アトロピン1Aを混注しておく。状況により、ボルベン500mlを三方活栓から点滴する。
SHSならば、側臥位をとらせるか、背枕をいれて半側臥位をとらせる。
95mmHg未満の低血圧の場合、当院では早めに、エフェドリンを希釈分割静注する。その際は酸素をマスクで5リットル/分で流す。適宜、水溶性ハイドロコートンの点滴静注(生理食塩水100mlに混注)を行う。下肢が数分で麻痺し動かなくなった場合はカテーテルのくも膜下迷入が疑われるので、カテーテルを抜去し、全脊麻や深刻な低血圧ショックを起こす前に、早めに対処する。麻酔液注入の中止、補液の増量、酸素投与、患者状態把握、知覚麻痺や運動麻痺の確認、呼吸状態の確認をすばやく行う。
今まで経験は無いが、呼吸抑制がもし起こった場合は、医師が人工呼吸を行う。自発呼吸が可能となるまで、人工呼吸を続ける。血圧を80mmHg以上に保つ。状況により、高次施設へ救急搬送する。
当院では硬膜外麻酔チューブから一度に10ml以上の麻酔液を注入することは原則的にしない。テストドーズおよび初期投与の総量は8mlまでであり、大量の麻酔液を一度に入れることは避けている。その後の麻酔維持もシリンジェクターによる低濃度麻酔液の持続注入法を採用している。全脊麻を避けるためである。
それでも、3回目の初期投与後(セミファーラー体位で麻酔液4ml注入したあと)や麻酔液維持液を開始した後でも低血圧が発生しうる。自動血圧測定装置を装着しておき、適宜、血圧を監視する。低血圧発生時には側臥位への変換、酸素マスク5リットル吸入させ、補液速度を早め、医師に報告を。
2.局所麻酔薬中毒
硬膜外腔の左右の奥には、静脈叢があり、カテーテルが左右にずれて入ると誤って静脈中に麻酔液が注入されることがある。初期症状として、舌・口唇のしびれ、金属様の味覚、興奮、めまいなどがあり、「麻酔が効かない」という事も疑う要素となる。(カテーテルを絶対に左右にずれていれてはならない。)中毒が疑われたら、自己判断で麻酔液注入を中止してよい。ただちに酸素をマスク5リットル/分投与する。酸素投与で症状が治まることが多い。医師にただちに報告する。興奮・ふるえ・痙攣がある場合はホリゾンを1/2A〜1A側注が指示される。補液を早める。
経験は無いが、痙攣がおさまらず、呼吸停止した場合は人工呼吸をしながら、高次施設へ救急搬送する。
3.硬膜穿刺
経験は無いが、やせた妊婦さんでは、皮膚の局所麻酔で硬膜を穿刺することがあるらしいので、要注意である。硬膜外針で穿刺した場合は髄液が逆流する。硬膜外針が太いので、硬膜に穴があき、髄液漏出により、翌日からの頭痛が必発である。(絶対に誤穿刺してはならない。)当院の穿刺部位は通常より高位の第1〜第2腰椎棘突起間で穿刺するが、下方よりも硬膜外腔までの距離が短いので、細心の注意が必要である。皮膚から硬膜外腔までの距離はL1〜L2では4cm以内の事が多く、医師は硬膜外針の外筒の目盛りで深さを確認しながら慎重に刺入する。
針では穿刺していないがカテーテルで誤穿刺することがあるようで、その場合は麻酔液が注入されるので、試験投与2〜4ml程度の少量でも脊椎麻酔となり、上肢・下肢の麻痺、投与量が多いと全脊麻による呼吸抑制がおこる可能性がある。上記の早めの対処を行う。
4.母体発熱
原因不明ですが、麻酔後、発熱が見られやすい。人工破膜後、長時間経過した場合は子宮内感染・母体感染に留意する。母体発熱の有無は必ず、医師に報告する。
5.胎児モニター異常の出現
原因不明ですが、無痛分娩では細変動の減少、一過性徐脈の出現頻度が増すようである。胎児モニターがネット配信されている二次施設へFAXで情報提供を必ずおこなっておく。潜在性胎児機能不全が疑われる場合は医師に報告する。細変動の減少が麻酔によるものか胎児機能不全によるものか判別するために、時にバイブレータを使用し、胎児を刺激して反応をみる。
6.高血圧
高血圧が140/90以上で続けて観察される場合は医師に報告する。高血圧の重症化傾向がある場合は医師の指示でマグネゾールを使用する。血管確保は18Gで行う。(1)50mlのディスポ注射器にマグネゾール20ml(2g)×2Aをつめて延長チューブを2本つなぐ。1本では点滴ルートまで届かない。(2) シリンジポンプにマグネゾール入り注射器をセットする。(3) 点滴メインルートの側管(三方活栓)にマグネゾール注射器につながる延長チューブをつなぐ。(4) シリンジポンプ流量設定してスタートする。80ml/時30分間かけてローディング。(5) 当院で継続管理する場合はローディングが終了したら、50mlのディスポ注射器にマグネゾール20ml(2g)×2A をつめて 10ml/時 に設定して維持する。抑制不可の場合は医師の指示で5ml/時ずつ増量。
高血圧の増悪・抑制不可の場合は、高次施設へ救急搬送する。
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